うちの奥さんが岩手県の盛岡出身で、親戚も東北周辺に住んでいる。義姉の家族が女川で旅館を営んでいたが、先の震災で被災し、全部流されてしまった。子どもとペットの猫は助かったけど、ご両親は亡くなっている。
震災後、同じように被災した旅館が4社あつまってトレーラーハウスの宿泊施設を始めた。スペイン語で灯台を意味する「エルファロ」という名前で、復興支援に来た人や、女川の親族に会いに来た人の宿として利用されている。
EL FARO - エルファロ - 被災地初のトレーラーハウス宿泊村
義姉は理事長をやっていて、新聞やテレビなどのメディアにもよく出ている。ラジオだと東京FMでやっている中西哲生のクロノスという番組に毎週出ている時期もあった。JFN系列つながりでFM愛知でも流れていたようで、実家のオカンに「サトコさん出てるよ!」と教えてもらった。
奥さんの実家が盛岡なので、近くまでは行くけど寄る機会がなかった(車でも電車でも2時間半くらいかかる)が、ちょうど自転車で遊ぶのが楽しくなってきた時期にツールド東北開催のツイートを見かけて、開催地が女川周辺だったので応募してみた。抽選で外れる人もいるなか、無事当選できて行けることになった。初の遠征だ。
準備編
参加を決めたものの、自転車をどう運べばいいのか分からない。ツールド東北事務局からのメールを見ていると、西濃運輸のカンガルー自転車便の案内が出ている。料金は東京から東北まで往復8,000円、梱包のための輪行箱が2,100円(買うと7,200円)。合わせて1万円くらいするらしい。
ご利用条件を見ると「シティサイクル(ママチャリ)はご利用できません」となっていて動揺が走るが、カゴもないしバラせばなんとかなるだろうと言い聞かせる。ただ、1万円払って1回きりなのがちょっと引っかかり、何度も使える輪行袋を買って自分で持って行くことにした。
Amazonで6,000円くらいの オーストリッチ ロード220 を買った。品名の数字が生地の厚さを表しているようで、もう一つ下で値段も安いロード100と迷ったが、自転車が重くて袋が破れたら困る…かなり困る、ということで220の方にした。
タイヤの付け外しはパンク修理などでたまにやっていたが、後輪の脱着が苦手でリアディレイラーの調子も悪くしてしまうことが多かった。好機到来とばかりにこのタイミングで練習して克服した。
袋への入れ方も全然分からなくて最初は30分くらいかかった。5回ほど出し入れするうちに慣れてきて、10分まで短縮できた。運ぶのは自分だし少しでも軽い方がいいだろうとキックスタンドと金属製のチェーンガードを外したが、それでも13kgくらいあった。
この輪行バッグはタイヤを入れるポケットが付くタイプだけど、いまいち入れにくくて活用できていない。タイヤを固定するベルトが2本付いていたので、マニュアル通りに上部を固定して、もう一つのでサドルの辺りを固定した。本当はポケット無しの人は3箇所固定するらしいが、ベルトが2本しかないので仕方ない。
ホイールがクイックレバーじゃないので車軸が突き出ていて、担いだ時に脇腹や腰に刺さって痛い。重いし痛いし輪行はつらい。
移動編
行きの新幹線では後ろの方の座席を予約していたので、背もたれ裏のスペースに置いておけた。
仙台駅に着くと輪行組がたくさんいて、石巻に向かう電車は自転車だらけになった。輪行袋のメーカーや種類は少ないので、同じ袋の人を何人も見かけた。
一応自立するが電車の揺れで倒れても嫌なので、仙石線では手すりに固定していた。周りの人もそんな感じだった。
石巻駅に着くと石ノ森章太郎のキャラクターがそこら中にいた。ラッピング電車のほか、駅併設の喫茶店の壁や階段にもイラストが入り、改札前には仮面ライダーとサイボーグ009の像が置いてあった。
石巻は石ノ森章太郎の第二の故郷らしく、近くに石ノ森萬画館もある(生まれは宮城県登米市で、そちらにも記念館がある)。あとで萬画館の近くを通ったら記念撮影しているローディを多数見かけた。
駅を出ると、すぐ目の前のロータリー付近で自転車を組み立てている人が大勢いた。ツールド東北のスタッフも来ていて、シャトルバスの案内などをしていた。シャトルバスは自転車の積み込み可だったが、場所に限りがあるためできるだけ自走をすすめていた。駅から石巻専修大学までは自転車で10分程度なので、組み立てて自走しても全く問題なかった。
前日受付編
受付に必要なのは「Yahooから発行されたQRコード」と「自己診断チェックシート」だった。シートは忘れてしまったが受付ブースの前にたくさん置いてあったので、チェックを入れて名前を書いて提出した。参加する距離ごとに受付がわかれていて、ゼッケンとツールド東北のTシャツがもらえた。ゼッケンはジャージの背中用、ヘルメット用、自転車用の3種類入っていた。
自転車用?と思ったが、DNFした時に回収車が自転車を持って行ってしまうので、その識別用だった。
受付を済ませて出店しているお店をまわり、休憩スペースで昼食にした。4時から「気仙沼&南三陸フォンド攻略ガイド」があり、少し時間があったので子どもとIRCブースに行き、キクミミさんと記念撮影した。接客中にもかかわらず快く応じて頂きありがとうございました。ステッカー1枚買いました。
子どもはちょっと怖がっていて、「アレにも人間が入っているの…?」と聞かれた。色んな意味で変態さんが入っています。
攻略ガイドではリアス式海岸の苛酷さ、道が狭い部分の注意、最終20kmの川沿いの向かい風、集団走行時の心得みたいなものを聞いた。「長い距離だしトレインで進むと楽だよ、人の後ろにつくときは一声かけるといいよ」とも言っていた。
イベント終了後、自走で義姉宅に移動。翌朝も通る道なので予習も兼ねて帰った。
前日深夜編
義姉宅で夕食を頂いて甥っ子たちと花火をして…とやっていたらあっという間に9時になってしまい、あわてて自転車の点検と装備チェック、翌日持っていく荷物と置いていく荷物を整理して寝た。
寝た…と思ったら昼間が楽しすぎた4歳児が興奮して普段しない夜泣きをしたり、猫の源さん(人間だと50歳くらい)が何度も遊びに来たり、突然大雨が降ったり…していたので1時間位しか寝れなかった。不安だ。
当日のスタート待ち
朝4時に起きて簡単な朝食を済ませ、5時ちょっと前に出た。日の出前で暗かったが、大学に着く頃には明るくなっていた。着替えが入った荷物を受付クロークに預けて、南三陸フォンドの列に並んだ。5時半くらいだった。
先に220kmクラスが出ていくので、自分の順番は6時頃だった。こんな感じでぞろぞろと順番待ちしてた。
そろそろ!
#ツールド東北 pic.twitter.com/JznWK0qVzN
— Kamiya (@nori_1211) September 12, 2015
すぐ後ろの人が撮った写真に自分が写っていた。丸いヘルメットにオクトキャットが目印。
いきなり応援を受ける
スタートして大学の裏側に回ると早速応援された。大学裏の道路沿いには民家が並んでいて、歩道も広いので早朝から応援のために出てきてくれていた。ボランティアスタッフの人もたくさんいて、嬉しいやら少し照れくさいやら複雑な気持ち。
「いってらっしゃい」「がんばって」という声に初めは手を振って返すだけだったけど、そのうちこちらも「行ってきます!」「がんばります!」「ありがとうございます!」と選挙カーさながらに声を出していた。トレインを組む他の人もわりとそんな感じで、楽しいスタートを切れた。
道中のいろんな場所で、家の前に出てきて応援してくれる人やボランティアスタッフの方に声をかけられた。正直うれしいので、ゴールするまでほとんどの人に「行ってきます!!」と応えた。少し離れた家の窓や、陸橋の上、すれ違う車の人からも声援を受けて、こちらも積極的に返していった。
第1エイド 女川駅
最初のエイドまではほぼ平地な上にみんな元気なので、スタートした集団のまま女川駅になだれ込んだ。500人くらいいたように思う。
サンマのつみれ汁をもらった。バナナと水ももらって、芝生に座って食べた。サンマの旨味があっておいしい。食べてすぐ出発したけど、列に並んでる時間が長くて20分くらいの滞在だった。平均時速も20km/h前後だったので時間内に終われるかちょっと不安になる。
女川〜雄勝間
この区間がつらいと前日のイベントで聞いていて、実際起伏が激しくゆるポタ勢が脱落していった。
標高グラフもかなりギザギザしていて、登ったり下りたり斜度もたまにキツイのがあったりする。あれ、この…この坂の感じ、どこかで…
この坂は、裏尾根幹でやったところだ!
ということでぼちぼちなペースで雄勝に到着した。
第2エイド 雄勝硯伝統産業会館跡地前
第2エイドからは空いていたので、ササッと食べ物を受け取ることができた。ここではホタテを焼いていて、4つに切って紙コップに入れてもらえる。
これもおいしかったけどオツマミみたいでちょっと足りない。バナナももらって食べた。
北上川河口付近
建物が全部流されて平地がつづくため風が強い。人の後ろについて風よけしながら進む。
前日イベントで「人の後ろにつくときはひと声かけて…」と言っていたが、誰も声をかけずスッ…と後ろについていたので自分もそうした。ペースが合わないとちぎれたり追い越したりするため、程よいペースの集団を見つけてはお尻にくっついて進んだ。
声掛けといえば、「車来まーす」だけやった。伝言ゲームみたいに前の人につながっていくのが楽しい。
神割崎周辺
この辺りも起伏が激しく、上りで渋滞していた。並走して会話しながら進む人もいたが、たまに巡回してくるパトカーに「一列で走ってください」と注意されていた。また、ふらつく人を追い抜く際にだいぶ膨らんでしまう事があり、後ろからくる車に気を使った。
チェーン落ちする人も数回見た。単語として聞いたことはあるけどどういう状態なのか知らなかったので、生で見れてよかった。変速時にフロント側のチェーンが落ちるんですね。
また、ディレイラーの調整がうまくできていない人も結構いて、チェーンをガチャガチャ鳴らしたまま走っていた。
第3エイド 神割崎
雄勝のホタテが足りなかったので、ここではおにぎりをおかわりした。海の幸が入った海鮮炊き込みおにぎりで、程よく腹もふくれた。すぐ向かいの岸壁も壮観で、海を見ながら食べている人が多かった。
ツールド東北はエイドステーションが20kmごとに設置されていて、だいたい50分ごとに休憩ができる。今回はStravaをサイコン画面(地図じゃない方)にしていて、ここまではエイドの3km前だけペースアップしていた。
次のエイドでは昼食もあり休憩時間を長めに考えていて、もうちょっと足使ってもいいやと思ってペースを上げた。
第4エイド 伊里前福幸商店街
どのフォンドでも昼食はカレーだった。タコの入った海鮮カレーで結構辛い。辛くてドリンクボトルの水を全部飲んでしまったので、ここで初めて補給した。道中で水分補給はほとんどせず、エイドのジュースだけで意外と足りていた。
タコといえば南三陸のゆるキャラ・オクトパス君がいた。ひとつ前の神割崎にもいた。タコ推しだ 🐙
オクトパス君のぬいぐるみをヘルメットの上に付けている人がスタート前からたくさんいて、実はちょっと気になっていた。イベント会場で買えたんだろうか。検索したらウェブでも買えるようだ。680円。
(机上に)置くと(試験に)パスする、という謎のダジャレで合格祈願グッズでもある…とのこと。
ペースを上げて膝が痛みだしたので、木陰でマッサージとストレッチをした。左のカカトを持ち上げると裏腿が攣りそうになり、念入りに伸ばす。すぐ近くでオクトパス君も休憩していた。きぐるみが暑かったらしい。
第5エイド 蔵内漁港
折り返し地点近くのエイドで初の甘い食べ物。補給食がずっと塩っけばかりで、甘いモノが欲しくなってたのでちょうど良かった。かぼちゃ饅頭らしいけど中身は普通のあんこ。かぼちゃは生地の方なんだろうか。
わかめの味噌汁もあってどちらもおいしかった。
第6エイド ホテル観洋
フカヒレスープだった。正直な所フカヒレは味がよく分からない。
ここでは地元の人の応援メッセージが貼りだしてあり、ライダー側がイベントの意気込みを貼る場所もあった。自転車ゼッケンと同じく「完食します」と書いておいた。
この辺りまで来るとガチっぽい見た目の人たちも疲れが見えていて、ぐったりと座り込んでいる人も多かった。雨も降り始めてきて、iPhoneとバッテリー類をサドルバッグにしまって出発した。
戻りの神割崎周辺
坂を登ってたら義兄の運転する車に乗った奥さんが追い越しざまに写真撮って去っていった。
この辺りで距離も140kmを超えて、ガチ勢でも山慣れしてない人がどんどん脱落していく。険しい顔のガチ勢を追い越していくのが楽しい。
とは言えだいぶ疲れもあって、引き足はほぼ使えなくなってしまった。上りも全部ダンシングで進む。
流されて工事中の相川橋迂回路に、短いが13%の坂がある。ちょっと心配だけど距離が短いから大丈夫だろうと思っていたら、各フォンドの人たちが合流して大渋滞していた。道も狭く1列走行厳守なので、13%をプルプルしながら徐行して登った。
坂を越えたら悲しいことに左足の裏腿が攣ってしまった。サポートライダーの人がすぐ誘導してくれて、少し広くなっている路肩でストレッチした。5分ほどで再出発した。
第7エイド にっこりサンパーク
最終エイド。ここで別コースを走っていた @sotarock 氏を見かけた。クロコスジャージだった。
奥さんたちとも合流出来たので、エイドで配っていたアワビ入り茶碗蒸しとパウンドケーキをあげた。
いつの間にか旗をもらっていたので、サトコさんや子どもと一緒にしばらく応援していた。応援するのも楽しい。
川沿いのラスト20km
「平地だけど川沿いで向かい風だから頑張ってね!」と前日のイベントで紹介されていた場所。ここまでで裏腿を使いきっていたので、立ち漕ぎ混じりの踏み足中心で進む。
ほとんどの人がバテていて巡航速度が遅い中、アホみたいに速いトレインが追い越していった。そこの後ろにつきたくて全力で追いかけたが、速すぎて少しずつ離されてしまった。
トレインの先頭を引っ張っていたのは211kmの気仙沼フォンドの人で、向かい風関係なしに爆走していった。
後ろについていたライダーも上手な人達で、キレイにそろったハンドサインが印象的だった。揃いすぎていて、交差点でスローダウンのサインがヒゲダンスみたいになってしまい、しかも周りの車には伝わってなさそうで変な空気になっていた。
ゴール後
ゴールするまで意外と雨が降らなかったが、どう見てもこの後雨になる雲が近づいてきた。帰りの電車の都合もあるので、完走証を受け取ると足早に会場を後にした。
会場入口の方では西濃運輸のトラックが待機していて、自転車配送便の準備をしている人たちがいた。その脇を宿泊施設や、ちょっと遠い駐車場に自走で向かう人がたくさん通り過ぎていった。
その辺で着替えて石巻駅に向かい、自転車を輪行バッグに詰めて、義姉や甥っ子たちにお別れして帰路についた。石巻駅のNewDaysはおみやげコーナーがあるんだなぁ、と思いながら普通の菓子パンを買って帰ってきた。
帰宅後
自転車が本格的に楽しくなってきたので、帰宅後は自室に自転車用スペースを作ったり、工具を点検したり、サイクルウェアやヘルメットももうちょっとそれっぽい物に変えようか、と思ったりした。自転車もいずれ新しい物に…。
という感じでツールド東北はものすごく楽しかったので、来年もぜひ参加したいですね 🚲
また抽選当たりますように!