ザ・プロフィット巡りをしているので、サムウォルトンに続きオーヴィッツ読了。オーヴィッツはザ・プロフィットの中で「スイッチボード利益モデル」の例として出てきた人物で、ハリウッドスターや関係者を抱え込んでパッケージ販売できるようにし、[タレント・製作者]←→オーヴィッツ←→[テレビ局]となるようなスイッチボード(電話の交換機)モデルを完成させた。
本書にも「パッケージ方式を作った人」というような単語がなんども出てきたので、実際それがオーヴィッツの特徴というかカラーなんだろうなと思う。が、このやり方のアイデアは以前からあったようで、ちょうどオーヴィッツが動き出した頃に時勢が傾いてきたような記述があった。
過去、映画に起用されるタレントを決めるのはスタジオであった。エージェントが権限を振りかざすことは出来なかった。パッケージングは何年も前から計画されていたが、ビジネスとして成り立ったことは一度もなかった。試してみるだけでも、将来の展望や長期戦略や大きな影響力が必要とされた。
こういうところまではプロフィットに載っていないので、興味深く読めた。
他にも気になった点がいくつかあり、極東文化好き、孫子の兵法が愛読書、日本人から交渉術を学んだ、というもの。交渉や契約なんて欧米文化で、日本に教えられるほど交渉術あったっけ?と思っていたら、こんな風に紹介されていた。
ビバリーヒルズのある不動産エージェントの話。「日本人は交渉術についてたくさんのことをアメリカ人に教えてくれる。手の内を見せないし、相手を疲れさせるのがすごくうまい。われわれにとっては時は金なりだけれど、彼らにとっては忍耐こそ金なりなのさ。チームで行動し、のらりくらりと身をかわし、相手に回答や長期的戦略を明かさないようありとあらゆる手をつかう。自分たちの準備が整ってはじめて手のうちを見せる。そのときにはこちらが計画を実行しようとしても手遅れなのさ。
日本人は相手が自分の行動に挑発されて怒ったり抵抗するよう仕向ける。そうしてから妥協させようとする。アメリカ人はたいていこの手にのってしまう。はやく取引を成立させて先に進むことしか考えないからね。だからむこうが勝利をおさめ、こちらは敗者になるのさ。日本人と交渉するには、並大抵の忍耐力ではやっていけないよ」
ところが二人のハリウッドのベテランは森下社長のオフィスで、松下電器の社員が現れて話をするまでにすでに何時間も待たされた。二人はかんかんに怒って帰国する。
ビバリーヒルズの不動産エージェントの話。「あれは日本人に典型的なパワープレーだよ。アメリカ人を怒らせ、平静を失わせ、序列のどこにいるのかを思い知らせるのさ」
なんとなく日本人って弱いイメージがあったけど、やることやってたのね…。先進国なんだし、考えてみれば当たり前のことなんだけど。なかなか表に出てこない(?)部分で知らなかったので、発見だった。
二つ目の引用の話は松下がMCAレコードを買収しようとした辺りの話なので、88~91年頃だと思う。つい最近だな…俺何にも知らないな…と思ったので、次は松下の本を読むことにした。事実は小説より奇なり。ノンフィクション面白すぎ。
97年の本だけど絶版?Amazonに新品がなくて中古6000円とか。